一般社団法人 静岡UPは、2023年度から「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」を実施しており、2025年3月28日(金)、有識者委員会にて今年度の成果と次年度への課題を報告いたしました。2024年度も、学術検討会議・イベント展示・巨大水槽での栽培実験・浜名湖フィールド調査・水中ドローン開発・研究所や学校との共同研究の模索など、地元の学校や企業と連携しながら様々な活動を行いました。
本プロジェクトは、1.壊れた生態系を取り戻すために浜名湖アマモを育てる、2.アマモ育成を小学校の総合学習に取り入れてもらい地元の子どもたちの学びとする、3.自治体や地元企業と一緒になって学術的な方向性を持って生態系豊かな浜名湖を取り戻すためのワンチーム作りを推進する、などを主な目的としています。この活動を学術的・科学的な見地から検討し方向づけていく指導的組織として、2023年度に有識者委員会が発足しており、年間を通じて活動しています。この活動は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
公式サイト:http://shizuoka.uminohi.jp/
浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト「有識者委員会」とは
有識者委員会は、浜名湖の現役漁師、大学教授、県や市など自治体、水族館やマスコミ関係者などを含む8人で構成されています。委員長は、浜名湖全域のアマモを長年にわたって調査モニタリングしている漁師でSDGsアマモ再生事業部会長の徳増隆二氏。副委員長は、静岡大学農学部教授の笹浪知宏氏が務めています。さらに静岡県デジタル戦略局の杉本直也氏、水中ドローン開発者の園部宏和氏(Sonovy代表)、浜松市環境政策課、湖西市環境課など、各方面のメンバーで構成されています。
徳増隆二 委員長
笹浪知宏 副委員長
2024年度「有識者委員会」のめざすもの
2023年度の有識者委員会では「浜名湖アマモの再生のため、具体的にどういったアクションをすれば効果的か?」を検証してきました。これに基づき2024年度は、1.小中学校8校でのアマモ育成教室の活動と連動しながら、アマモ苗の栽培から苗付け、コロニーの拡大など、科学的かつ学術的に主導する。2.浜名湖3Dデジタル海底マップの作成やアマモ場のデジタル把握を進めると同時に、ブルーカーボンクレジットとしての観測手法について検討を進める。3.自治体と連携行動し、地元企業の協力を拡大する。という目標を設定して活動してきました。
巨大水槽を使ったアマモ栽培実験をスタート
浜名湖でアマモが急減したのは「様々な環境変動の中で繁殖力が弱っているからではないか?」との仮
説に基づき、浜名湖体験施設ウォットや地元の学校や企業と共同で、強いDNAをもったアマモ苗を巨大水槽で育てる栽培を開始しました。この仮説や実験の様子は、地元の複合商業施設イオンモール浜松市野でも展示イベントを約2ヶ月間実施した他、地元企業がこの水槽実験を継続的に支援できる体制として協賛看板の設置を行いました。
看板設置について:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003147.000077920.html
地元高校生たちとコラボで水中ドローンを開発し、アマモ場の定点観測をスタート
浜名湖で約10年前より減少の始まったアマモ場がその後どのように変化し、浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトによるアマモ育成活動でどのように増えていくのかを把握していくための装置として、有識者委員の園部宏和氏をリーダーとするチームでは、調査船で曳航する方式のオリジナル水中ドローン開発を行いました。この開発と浜名湖海上フィールド調査には、焼津水産高校や静岡聖光学院の生徒たちと有識者委員会メンバーも参加して共同で航行と測量テストを行いました。
(写真左)曳航式水中観測ドローンの航行実験 (写真右)園部宏和 委員(Sonovy代表)
県外の研究機関や学校とも共同実験を実施しています
この他にも、アマモの量が大幅に増えた場合の活用施策を模索するため、大阪府立環境農林水産総合研究所との共同で「アマモ活用施策」について研究を行いました。また、「食害ウニの食用化」について研究を行っている愛知県田原市立田原中学校との共同研究についても模索しています。さらに、水中ドローンによるアマモ場の正確な把握によって得られたデータから、ブルーカーボンクレジット創出についてつなげる検討を進めており、次年度以降にもこれらの活動を継続していきます。
2024年度「有識者委員会」の成果
今年度の活動では、地元の子どもたちや企業の協力を得て発芽させたアマモを、実験水槽へと植え付けしました。これらのアマモ苗は実験水槽の中で成長を続けております。定植した苗の発芽をモニタリングしながら、水流の強さや塩分濃度など、アマモ栽培に向けた「最適条件」について多くの知見を得ました。またこれらの苗は次年度、実際の浜名湖の海浜へと移植する計画へとリレーすることになっており「強いアマモ種」のコロニー拡大に向けて、段階を進めていきます。この植え替え実証事業は、浜松市水産課や静岡県水産技術研究所浜名湖分場、浜名漁協の協力も得て実施する計画となっており、浜名湖の課題に対してワンチームで取り組む体制づくりをめざす浜名湖ワンダーレイク・プロジェクトの中心的な活動となっています。また、自治体や地元の学校との連携だけでなく、より積極的に地元企業を巻き込んで活動を拡大していく点でも、今年度はトヨタバッテリーやヤマハ発動機など、地元の有力企業からの協賛が得られたことが大きな成果となっています。
2025年度「有識者委員会」の活動に向けて
今年度の活動を受けて2025年度は、1.小中学校でのアマモ育成教室の活動と連動した「強い浜名湖アマモ苗の育成」は、発芽と苗植えからさらに一歩進め、実際の浜名湖海浜でのコロニー拡大実験へと移行する。この大規模植え替え実験フィールドワークの科学的かつ学術的な指導を有識者委員会で主導する。2.浜名湖3Dデジタル海底マップを活用し、アマモ場の再生に向けて最も効率的な場所の絞り込み・選定を進め、浜名湖の複数ヵ所で回復が見られ始めているアマモ場の再生をより加速させるべく検討する。3.共同開発した水中ドローンと調査船の電動運用により、ブルーカーボンクレジットの観測と創出をスタートさせる。4.自治体との連携行動、地元企業の協力拡大については継続的に活動していくという目標を設定しました。
<団体概要>
団体名称 :一般社団法人 静岡UP
URL :http://shizuoka.uminohi.jp/
活動内容 :●静岡県の豊かな海を未来に残すため、次世代を担う子供たちや若者を対象に、
海に親しみその素晴らしさ、豊かさを知り、大切にする心を育てる運動を興し推進する。
●静岡県内の各種団体や企業に、上記目的を広く周知し、運動への参加を呼びかける。
●静岡県内の海に関するイベントや、熱心な活動を続けている団体や個人を取材し、
番組やニュースで放送する。
●県内から収集した情報を集約し、ホームページなどを制作する。
●静岡県ならではの海に関するイベントを開催し、情報を発信する。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/