中村キース・ヘリング美術館(山梨県・小淵沢)は、世界エイズデー(毎年12月1日)に合わせて、HIV・エイズに対する予防啓発と正しい理解を深めることを目的としたイベント「中村キース・ヘリング美術館 世界エイズデー2025」(期間:2025年11月22日[土]~2025年12月21日[日])を開催します。今年新たに収蔵したキース・ヘリングのポスター作品「セーフ・セックス!」の初公開をはじめ、ヘリングの社会活動に関する資料展示やトークイベント映像の上映、コンドームの無料配布、HIV検査ディスペンサーの新設など多角的な企画を実施いたします。

1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト、キース・ヘリング(1958-1990)の作品には、「愛」「平等」「人権」といったテーマが強く反映されています。中でも、1980年代後半にエイズ・エピデミックが拡大する中で、患者やその家族、コミュニティの支援活動に深く関わりました。1988年にはヘリング自身もエイズ発症と診断されますが、以降もアートを通じて正しい理解を広げることに尽力しました。1990年に31歳という若さでエイズの合併症によりこの世を去りましたが、1989年に設立したキース・ヘリング財団は、現在もHIV・エイズの研究や子どもたちへの支援など社会貢献活動を続けています。中村キース・ヘリング美術館ではこうしたヘリングの精神を受け継ぎ、世界エイズデーに合わせてHIV・エイズの予防啓発と正しい理解を深める活動を実施いたします。
1. 新収蔵のポスター「セーフ・セックス!」を初公開
今年新たに米国のキース・ヘリング財団より寄贈を受けた、1987年制作のポスター「セーフ・セックス!」を当館エントランスにて初公開いたします。また、どなたでも無料でご利用いただけるオープンスペースでは、ヘリングが生前に政府や社会を動かすために行った活動・発信を示すポスター2点に加え、没後もさまざまな民間団体や企業のHIV・エイズに関する啓蒙活動においてヘリングのレガシーが受け継がれていることを示す、2000年代の未公開資料も合わせて展示します。ヘリングのアートと社会の動きがどのように結びついていたのか、その活動を多面的にご紹介いたします。
2. 2025年版HIV・エイズタイムラインの展示
当館が編纂するHIV・エイズの年表を本イベントに合わせてアップデート。展示資料とともに、アメリカおよび日本におけるHIV・エイズの歩みをヘリングの活動と併せて辿ります。

*写真は昨年のタイムライン展示の様子
3. 文化学園大学文化祭でのトークイベントの映像公開
11月2日(日)から4日(火)にかけて、文化学園大学(東京都渋谷区)で開催された文化祭において[ZERO transmission in Japan by 2030]によるHIV・エイズ予防啓発ブースが出展され、当館も資料展示やポップアップショップ、トークイベントに参加いたしました。
「中村キース・ヘリング美術館 世界エイズデー2025」では、このトークの模様を館内のオープンスペースにて上映いたします。[ZERO transmission in Japan by 2030]推進委員会委員長の白阪 琢磨氏による司会のもと、ドラァグクイーン/パフォーマンスアーティストとして活躍するマダム ボンジュール・ジャンジ氏、当館ディレクターのヒラクが登壇し、現代の視点からHIV・エイズについて語り合いました。
4. コンドーム無料配布とミュージアムショップでのブース展開
今年も相模ゴム工業株式会社ご協力のもと、館内でコンドームの無料配布を実施いたします。また、ミュージアムショップではACT UP*のグッズやHIV・エイズに関する書籍も販売いたします。
期間:2025年12月1日(月)配布開始(無くなり次第終了)

*ACT UP(アクトアップ):1987年3月ニューヨークで結成されたエイズ予防啓蒙団体。
5. HIV検査ディスペンサーの設置
誰もが気軽にHIV検査を受けられるよう、HIV検査キットを自動販売機形式で提供するディスペンサーを設置いたします。HIV検査に関する情報提供も併せて行い、来館者がより安心して検査や相談を行える環境づくりを目指します。