富士山須走口5合目にある「山荘 菊屋」が現在、7月10日の富士山の開山に向けて準備の大詰めを迎えている。
菊屋は標高約2000メートルにある山荘で、登山者向けに食事や休憩の提供、登山グッズのレンタルや宿泊の提供も行っている。宿泊者の収容数は70人で、食事処の席数はおよそ50。山荘の創業は江戸時代からといわれており、現在、店を営む渡辺昇さんは父から運営を引き継いで21年になる。毎年4月の中旬に麓の生活から山小屋での生活を始め、11月までの7カ月間、登山客を迎え入れて生活している。
渡辺さん夫婦は現在、7月10日の開山日から登山客を迎え入れる準備に追われている。近年の登山客について渡辺さんは「最近はネットなどが充実し、事前に準備をしてくる人がほとんど。昔はハイヒールで登山をする人もいたが、しっかり準備をしている人が多い。しかし準備不足や急な天候の変化に対応するため、今でもカッパなどの雨具に登山ブーツなどを準備している」と話す。
山荘の温度は7月5日15時時点で16度と低く、御殿場市内の温度と15度以上の差がある。渡辺さんは「7月からお盆までのシーズンが、ストーブを使わない山の短い夏の時期。急な天候変化を想定し、ストーブや布団などシーズンを通して防寒対策は行っている」とも。
山荘一番の人気メニューは「きのこそば」(1,000円)で、このメニュー目的に登山してくる来店客もいるほど。「現在はリピーターに満足してもらうため、そばだけでなくパスタやピラフなど、キノコメニューに幅が出てきた」と笑う。
山小屋運営について、渡辺さん夫婦は「人とコミュニケーションできる部分が面白い。世界遺産登録で規制が厳しくなり、近年の新型コロナウイルス感染症の影響もあり登山客が減っているが、それでも山を訪れる多様な人たちと会話するのが楽しい」と話す。今後について、「安全で楽しく登山ができ、旅の思い出に残る山小屋であり続けたい」とも。